2004年09月07日
台風が接近中の強風の中、地元兵庫県三木市で50年以上小刀専門の鍛冶をする「池内刃物」さんを訪問してきました。
初代の池内昭三さんは、兵庫県技能顕功賞受賞など各方面で認められる大変優れた技術を持たれた鍛冶屋さんで、その切出し小刀は、国内だけではなく、ドイツなどヨーロッパのバイオリンや家具職人に愛用されています。
現在、社長で二代目の久徳さんと、久徳さんの弟広和さん、そして三代目の広海さんの4名が鎚をふるい伝統の技術を受け継いでいます。
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火造り
早速、二代目の久徳さんが、切出し小刀の火造り鍛造を見せてくれました。
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まず、鋼を小刀用に切り出すところから見せて頂きました。 炉で真っ赤に赤めハンマーで伸ばします。
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ベルトハンマーとタガネを使い、適当な大きさに筋目を入れていきます。
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3回分(6丁分)に分けられた鋼材
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次に地金を炉で赤めます。
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熱した地金に、鍛接材を付け適当な大きさに切断した刃金(鋼)をおき、炉の中で熱します。
※この時の、鋼の位置にご注目下さい!包丁と違い、先が少し余っています。
(これは、一度に2丁分火造りするためで、小刀独特の火造りです)
このときの温度を高くすると鍛接しやすいのですが、鋼がもろくなり切れが悪くなります。
なるべく低い温度で鍛接するのが腕の見せ所です。 |
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炉で赤めた地金と鋼をハンマーで叩いてくっつけ、ベルトハンマーで叩き伸ばして鍛えていきます。
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真ん中部分に鋼が鍛接してあり、両端には地金が出ています。
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真ん中で斜めにタガネで筋を入れ、切り分けます
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切り分けられた片方、この斜めの部分が刃になるのではなく、
反対側の真っ直ぐな方が、刃になります。
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再度、炉で熱し、ハンマーで叩いて形を作っていきます。
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立て、横とはしでつかんで器用に動かしながら、鎚をふるいます。 |
あっという間にきれいな小型の形になってきました。 |
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2丁が同じように作られていきます。 |
こちらは、錬鉄木目小刀用の古鉄(鎖)とそれを伸ばしたもの
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初代の昭三氏がじっと仕事を見ておられました。
普段は気さくな方ですが、仕事ではものすごく厳しいらしいです。
「最近は、複合材(はじめから軟鉄と鋼がついたもの)を使うことが多いが、
わしは、自分で付けないと安心できん」と、
ちょうど三条の日野浦さんと同じようなことをおっしゃっていました。
やっぱりこだわりのある人は、全て自分の手でやらないと納得できないようです。
「鍛冶屋が鋼付け出来んかったら恥や」とも・・・
かなりの頑固さのようです(^^)
(もちろん、ホームセンターなどに向け、複合材を利用した安価な品物もあります) |
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火造りして、次の行程を待つ小刀
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こちらは、ホームセンターなどへ行く型抜き品
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火造りの後は、ならし打ち冷間鍛造、刻印打ちです。
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その後、グラインダーで荒研ぎします。
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焼き入れの後は、熱を加えないよう細心の注意を払って、水冷式の研磨機で刃付けをしていきます。
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荒目から中、細目と徐々に細かく仕上げます。
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ぼかしを入れるための、低速での研ぎ |
この後手研ぎで仕上げて、1丁の切出し小刀が出来上がります。
ものすごく手間がかかっていますね。 |
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積層材の雲流と、古材を使った錬鉄木目の 鮎小刀
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オーソドックスな青鋼本鍛造切出し小刀
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ストックされた、現在かなり入手困難な古鉄の鎖とそれを半分に切ったもの。
主に明治から戦前に英国で作られた、鉄としては不純物が多い粗悪なものですが、それを赤めて母材にすると、独特の風合いが出て研ぎやすいいい刃物が作られます。
鉋の地金に使われたり、前述の日野浦さんが作る錬鉄シリーズの母材になる物とほぼ同じです。
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左から社長の弟広和さん、社長で二代目の久徳さん、初代昭三さんと三代目の広海さん(将来が期待されます)
初代の池内昭三さんは、兵庫県技能顕功賞受賞など各方面で認められる大変優れた技術を持たれた鍛冶職人。
池内刃物の切出し小刀は、国内の本職用としてだけではなく、ドイツをはじめヨーロッパのバイオリンや家具職人に愛用されています。
ドイツの刃物屋さんには、昭三さんの写真が飾られているそうです(^^) |
事務所に飾られた、小刀の額
近くの金剛寺の寛永時代の古い和くぎを使って作られています。 |